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紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている( 佐々 涼子 )早川書房 [読書]

紙の文化を絶やしてはならない。

「紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている 」という本は
東北大震災で被災した日本製紙石巻工場の復興の記録である。

日本の出版に使われる紙は石巻工場の8号機が作っている。
その8号機が動かなければ新聞も本も雑誌も印刷できない。
日本の出版が死んでしまう・・・

津波によって海水とがれきで滅多打ちにされた工場で
日本製紙の従業員達は一丸となって復興に努力した。
半年というあり得ない期限を自らに課し、ただ黙々と
泥とがれきと戦い続けた結果、見事に工場は再生した。
再始動の日、オペレーターの操作によって最初の紙が
見事にまきとられた

紙を作る機械を始動させるとき
いくつかの工程はオペレーターの手に委ねられている。
オペレーターが機械をガイドし補助することで
紙はリールに巻き取られていく。
その一連の作業を『通紙』あるいは『紙つなげ』という。
この作業は大変難しいものだそうで
熟練のオペレーターでもなかなか一度では成功しないらしい。
それまでの最短記録は一時間。
だが、石巻工場再始動の日、その「紙つなげ」はたったの28分で成功
『一発通紙』という奇跡を起こした。
まるで機械が意思を持っていて石巻工場の復興を祝うように・・・

この作品はノンフィクションである。
全てが記録、証言に基づいた事実。
紙がどこで作られているか、なんて
気にしたことがない人にこそ読んでほしい。
日本の本を作っている紙は石巻で作られている。
その紙を作る機械は日本製紙の従業員が命がけで
再生させた機械である。
彼らの努力を無にしないためにも紙の本を絶やしてはならない。
そのためにはまず本を読もう・・・紙の本を。
そして、物書きの端くれである私に出来ることは
読みたいと思ってもらえる本を書くこと。
一人でも二人でも多くの人が買ってくださるような本を・・・

出版業界は大不況の中で息も絶え絶えになっている。
本を読まない人が増え、読む人も電子書籍に移行しつつある。
けれど紙の本には紙の本にしかない魅力がある。
一枚の紙を心を込めて全力で作り続ける人々のために
紙に文字を綴るという文化を絶えさせてはならない。

この本の売上の3%が石巻の小学校の図書購入費として寄付される。
未来の出版業界を支えるのは子どもたちの読書習慣だと思う。
この本を買うことがその一助となるのかもしれない。
そんなことを思いながら、最後のページをそっと閉じた。


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オチつく家族(重野なおき) [読書]

なんかもう心底見習いたい。

子どもの頃は連載漫画をよく読んでいたが
性格がせっかちなので大人になるにしたがって
毎週とか毎月の連載を追うことが辛くなった。
そのため長編漫画は単行本になってから
しかも完結してからしか読まないと決めた。
おかげでたまに気に入った漫画を見つけると
どわーっと大人買いして徹夜で読む・・みたいな
随分体力の要ることになっている。

だが、もうそれすらもあまりになくなって
今読むのはもっぱら四コマ漫画である。
どこから読んでも起承転結がはっきりあるし
ちょっとの隙間時間でささっと読めるし
全身の緊張を解くにはもってこい。

そんな私が最近気に入っている漫画家に
重野なおきという人がいる。
この人は同じく四コマ漫画家の藤島じゅんという人と
結婚して、今は双方が家族エッセー漫画なども書ている。
子どもがいる私にとって、ああそうそう!と手を打ちたくなる
話もたくさんあって、とにかく楽しい。
そのご夫婦が、共著で書かれた「オチつく家族」という作品を読んだ。

で・・なんというか、藤島じゅんさんのあまりの潔さに驚いてしまったのだ。
このお二人はお互いにネタについてのだめ出しなども
ちょくちょくしているらしいのだが、旦那さんの重野なおきさんは
デビューも藤島じゅんさんのあとで、後輩となるからなのか
藤島さんの意見をちゃんと聞いて参考にしている。
だが、藤島さんのほうはだめ出しされても自分の考えを曲げない。
一貫して「いや私はこれで行くから」という態度らしい。
「じゃあなんで意見なんて求めるの?」と重野さんが聞くと

『意見なんて求めてないよ。ほめたたえてもらいたいだけだよ』

ときっぱり・・・・

これを読んで、もう私は悶絶しそうになってしまった。

ああ、なんて正直なんだ。
そして、なんて自信がある人なんだ。

人間は誰だって褒めて貰いたい。
だめ出しされて、腐されて嬉しい人なんていない。
(いや・・まれにマニアはいるのかも・・・)
それでも、批判は批判として受け止めてそこから何かを学び
明日の自分に生かさなければ・・と思っている。
いや、思おうと、思わなければならないと思っている。(ややこしい・・)

批判なんて聞きたくない、賞讃だけが聞きたい。
そう言ってしまうことの反動が怖くてならないのだ。
(私などその最たる者である)
よほどの自信がなければこんなことは言えない。
うらやましくてため息が出てしまう。

作品が人目に触れる機会が増えれば
それに対する反応も増える。
賛否両論といえば聞こえは良いが
耳に入ってくるのはおおむね否定的な意見である。
人の声は、否定的意見を言うときほど大きくなる。
大声の批判の裏に、ちゃんと肯定意見だってある。
それはわかっていてもやっぱり耳を覆いたくなる。
自分を見失いそうになって作品自体が揺らぐこともある。
私はいつだってそんな風にぐだぐだなのだ。

だからこそ、藤島さんの潔さに憧れてやまない。
私が藤島さんが書く作品を面白いと思うのは当然。
その藤島さんが『あなたの漫画が面白くなかったら結婚していない』と
いう重野さんの作品が面白いと思うのも当然、と大いに納得した。
これからも単独で、あるいは夫婦共著で、優れた作品を
数多く生み出していってほしいと思う。


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